伝統的な考え方では、ぬいぐるみは子ども専用のものとされています。しかし今では、この玩具カテゴリーが多くの大人からも手放せないほど愛されるようになっています。多くの大人がぬいぐるみを好むのは、むしろ子ども以上である場合さえあります。

　　捨てられたぬいぐるみを養子縁組し、余暇を使ってその修復方法を研究する人もいれば、定期的にぬいぐるみの写真を共有する人、ぬいぐるみと一緒に旅に出かける人もいます。さらには、多くの人がぬいぐるみを生きている存在として捉え、そこに魂を吹き込んで、寄り添い癒しの機能を持つ特別なアイテムにしているほどです。

　　ぬいぐるみへの感情的依存と擬人化現象の背後には、わが国で「癒し経済」が着実に発展していることの表れがあります。新たなビジネス形態である「癒し経済」は、人々が抱えるストレス解消やリラックスという本物のニーズから生まれており、その主なモデルは消費者のストレスを解消し、リラックスできる場所や商品、サービスを提供することにあります。

　　社会経済が絶え間なく発展し、物質的水準が向上しているにもかかわらず、一部の人々は依然として仕事や生活の中で大きなストレスに直面しています。そのようなストレスは、人々の孤独感をますます高め、帰属意識が満たされない状態を招きます。長期間ストレス環境に置かれることで、正常な社交生活にも影響が及び、感情的な関係が脆くなりやすく、他者に気持ちを託すことが非常に難しくなります。そして、ストレスを解消し、感情を寄り添わせる必要性を抱える人が徐々に増えていくにつれて、ぬいぐるみなどを媒介とした「癒し経済」が生まれました。

　　「癒しの担い手」として、ぬいぐるみは多種多様な形や柔らかな素材などの特長により、「癒される」人々から高い人気を集めています。

　　研究によると、大人の世界では、手触りが柔らかく繊細なぬいぐるみが、現代の若者の仕事や生活におけるストレスを和らげる効果があることが示されています。

　　心理学者のドナルド・ウィニコットは、ぬいぐるみを「移行的対象」と呼び、一人っ子の子どもの幼少期を支える重要な存在となり、子どもにより強い帰属感を与えました。子どもが成長するにつれて、安心できるおもちゃへの依存感は年齢とともに薄れるどころか、逆にますます強まる傾向があります。研究によれば、こうした人々と安心アイテムとの絆は、彼らが大人になってからも、人生のストレスに適応する助けとなることが示されています。

　　実際、ぬいぐるみにせよ、「癒やし経済」にせよ、その本質は、人々が仕事や生活の中で生じる心理的ストレスや心理的負担を、何らかの方法やアイテムを通じて解消しようとする結果である。

　　人々はぬいぐるみに慰めを求め、感情を寄せる。それは単に子どもの頃の記憶を取り戻すだけでなく、物質的な生活がますます豊かになり、消費形態が多様化する現在において、孤独な心の世界を癒すための効果的な処方箋となっているのだ。